いろいろな腹痛|高根公団駅|内科・消化器内科・呼吸器内科・循環器内科・小児科|遠藤医院

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いろいろな腹痛

2回目は消化器内科寄りということで腹痛についてお話します。

 

前回同様、あくまで一個人の意見ですので参考程度にお読みください。

 

やっぱり難しい“お腹が痛い”

1.そもそも腹痛とは

「なんだかお腹が痛いな」

「吐き気もするし、下痢も出てきた」

「お腹が張っている感じがする」

 

明らかにお腹付近が“痛い”と感じるときもあれば、不快感として感じるときがあると思います。

腹痛と一言で表しても患者様によっては様々な表現で病院に来ます。

 

それには、お腹の臓器そのものの神経がやや分かりづらい構造をしているからです。

皆さんは普段食事をしているときに、いちいち食べ物がどの臓器にあって、どこを具体的に通っているという詳しい感覚まではわかりませんよね。

おおよその感覚のみでわかっていると思います。これは、胃や腸のうちがわには手足の表面のような痛覚神経や感覚神経(表在感覚)がないことに由来します。

おおまかな感覚を内臓の神経を介して“痛み”や“不快感”として自覚しているのです。

 

痛みの位置のおおよそまでわかっても、ピンポイント(指先1つで示せるほど)で説明できるほどの痛みにはならないことが多いです。

これを“内臓痛”と呼んでいます。

 

一方、同じ腹痛を訴える患者様の中に

「ここが痛いんです!」

とピンポイントに教えてくれる人もいます。

 

それは内臓ではなく、より体の表面に近い部分、例えば筋肉や腹膜(皮膚の直下)、皮膚に実際の病気があることが多いです。

これは先程説明した内臓の神経とは別で、手足に近いような神経が通っている部分に特徴的です。これを“体性痛”と呼びます。

 

帯状疱疹がたまたまお腹にできてしまった人はよくピンポイントで教えてくれます。

帯状疱疹自体は皮膚付近の神経を直接痛めているので場所がわかりやすいのです。

 

まとめると

  1. 内臓痛
    なんとなくお腹が痛い、ここらへんが痛いといったように大まかな説明になることが多い

  2. 体性痛
    ピンポイントで場所を説明できる場合が多い

 

正直、患者様の方で区別はしなくてよいのですが、一応色々あるのだなと思っていただければ幸いです。

 

2.腹痛の危険な3つのサイン

腹痛といえども胃腸炎のような軽症なものから、直ぐに手術になるような重症のものまでたくさん病気があります。

自分も消化器内科を経験していましたが、正直、患者様の症状で嫌なのが腹痛でした。やっぱり難しいです。

 

その中でも患者様にはあえて家で我慢せずに、早く病院に来てもらいたい3つのサインをお伝えします。

 

  1. 冷や汗、あぶら汗を伴う腹痛
  2. 痛みに波がなく、だんだん痛みが増してくるとき
  3. 血便(血がついた便)や高熱を伴う腹痛

 

上記に当てはまる際はすぐに病院や診療所へ向かってください。そのまま放置すると大きな病気を見逃す場合があります。

内臓に大きな異常が起きているときは、ずっと痛みが続くこと(持続性の痛み)や痛みの強さも強いことが多いです。

当院では腹部超音波やX線(レントゲン)、炎症の数値がすぐにわかる採血機がありますので、もし重症とわかればすぐに近隣の高度医療機関を紹介、または搬送致しますのでご安心ください。

 

逆に

『痛みに波がある(痛いときと痛くないときがある)』

『明らかに何か食べ物を食べたあとから調子が悪い』

『便が出ると痛みが引く』

 

といった場合は危険信号までとはいかないことが多いですが、心配の場合は受診をオススメします。

 

個人的な感想ではありますが、腹痛と下痢が両方あると少し安心します。

胃腸炎で典型的なのが下痢も出てくれるところなので、下痢の症状があるかないかで大きくかわります。

 

3.お腹の位置ごとの代表的な病気

先に言ってしまうと、

1、2、7、9は比較的典型的な症状が出てくれることが多いですが、それ以外の部分に関してはよくわからないこと(胃腸炎含め)が多いです。

あくまで傾向なだけであり、部位だけで病気が決まるわけではないのでご注意ください。

 

右上腹部痛①

胆嚢炎、胆管炎、胆石発作、憩室炎など

この位置には肝臓や胆嚢と呼ばれる臓器があります。肝臓それ自体はあまり痛むことはないのですが、胆嚢や胆管といった肝臓からの消化液の通り道に炎症が起こると痛みが出てくることがあります。

また、この部分には大腸の中でも憩室と呼ばれるものができやすい部分であり、そこが炎症を起こすと腹痛が起こることがあります。

これらの炎症は発熱と腹痛がセットで起こることが多いです。

一方、胆嚢に石ができてしまい(胆嚢結石;胆石)、それが一時的に詰まると起こる痛みが胆石発作です。差し込むような痛みが右上腹部に出ると言われています。炎症まで至ってない場合は、発熱がないことが多いです。

 

心窩部痛②

膵炎、逆流性食道炎、虫垂炎(盲腸)、心筋梗塞など

皆さんは“みぞおち”や“胃のあたり”と表現する部分です。もちろん、胃もあるのですが、その他には膵臓や食道の痛みがここに現れやすいです。

脂っこいものを食べたあと、お酒を普段から大量に飲む人がみぞおちを痛がった場合は膵炎であることもあります。

食事前や、食後横になっているときに「苦い水が上がってくる感じ」「胸焼け」がする場合は逆流性食道炎があるかもしれません。

意外と思われるかもしれませんが、いわゆる“もうちょう”(医学的には虫垂炎)の最初はみぞおちが痛くなることがあります。

     吐き気→みぞおちの痛み→右下腹部の痛み

というような経過を辿ったときは虫垂炎をかなり疑います。

 

また、私達のような消化器疾患をよくみる医者にとって嫌なのが心筋梗塞です。

『お腹だから心臓は関係ない』と思ってると時々足元をすくわれます。

 

右下腹部⑦

虫垂炎など

“もうちょう”ですね。実際には虫垂と呼ばれる臓器がこの辺りにあり、それが炎症を起こすことで“もうちょう”になります。

みぞおちの痛みのところで説明しましたが、痛みが移動してきたり、右下腹部がピンポイントで痛む、歩くだけで響くような痛みが出る場合は“もうちょう”を疑います。

 

左下腹部⑨

憩室炎、便秘など

大腸にできる憩室はここにもできやすく、このあたりが痛んで発熱がある場合は憩室炎であることもあります。

それ以外では、便が何日も出ないときにこのあたりが痛んでくると便秘であることも多いです。

 

それ以外の部分

色々です

大雑把な表現ですみません。胃腸炎から腹膜炎など多岐にわたります。

お腹の手術をしたことがあり、嘔吐や便秘で来院される方の中には腸閉塞になっている場合もあります。

 

いずれにせよ前のところで説明しましたが、以下の危険信号

  1. 冷や汗、あぶら汗を伴う腹痛
  2. 痛みに波がなく、だんだん痛みが増してくるとき
  3. 血便(血がついた便)や高熱を伴う腹痛

 

があった場合はすぐに近くの病院を受診しましょうね。

 

お腹の痛みでその他に多いのは腎結石もあります。大体の人は背中の痛みで来るのですが、時々お腹の痛みで来る方もいます。

 

一言でお腹といっても色々な臓器がゴチャゴチャあるので、やっぱり“腹痛”はいつまで診てても難しいですね。

 

4.治療について

 

病気次第で薬や治療は変わりますが、代表的な治療法を説明します。

 

a.水分摂取

基本中の基本ですが非常に大事です。

胃腸炎や下痢、発熱などを起こしている場合は、一般的に脱水に陥りやすいです。

 

時々、「下痢をするから水を飲むのを控えている」という方がいますが、絶対にやめてください!

 

ただの胃腸炎でも重度の脱水になってしまうと危篤になることがあります。

病気の際はいつも以上に体が水分を欲しております。

下痢や嘔吐で水分が出て行っている場合は、その出た量以上にしっかりと水分は補給してください。

巷では経口補水液も売っているので、胃腸炎などの際はオススメしております。

スポーツドリンク系を飲むことも良いですが、中には糖分が多すぎるものもあるので医師に確認してみましょう。また、カフェインが多く含まれている飲料は、摂取量以上に尿が出ることもあるので控えたほうが無難でしょう。

 

b.整腸剤

下痢がひどい場合は処方することが多いです。腸内細菌を整えることで、下痢症状などを抑えたいときに使用します。

腸内細菌は近年非常に注目されており、胃腸炎などに限らず様々な病気の手助けになるのではないかと言われております。“体の健康は腸から”というのは本当なのかもしれません。

 

胃腸炎で抗生物質が必要と思っている方が時々いますが、大概の胃腸炎は抗生物質は必要ありません。むしろ、軽症の病気に繰り返し抗生物質を使用していると、将来その抗生物質が効かなくなることがあるので、安易な抗生物質の使用は厳禁です。

 

下痢止めに関しても安易には使用しません。細菌性腸炎などの場合は、下痢を止めてしまうことで腸内から菌の逃げ場がなくなってしまい、むしろ症状を悪化させることがあるからです。

あまりに長引く下痢などは、状況次第では使うこともありますが、やはり医者の判断に従ったほうが無難でしょう。

 

c.吐き気止め

一般的には腸の運動を促進して動きを滑らかにし、かつ、脳の吐き気を感じる部位に作用し吐き気を感じづらくさせる薬になります。

よい薬なのですが、中には使用してはいけない人もいるので注意です。

例えば腸の動きが制限されている人(腸閉塞)に使用した場合は、腸閉塞の症状を悪化させることがあります。

また、パーキンソン病などを患っている人は症状が一時的に悪化することもあります。

薬は良い面・悪い面があるのでしっかりと区別して使用する必要があります。

 

d.痛み止め

お腹に限らず何かが痛いときは痛み止めほしいですよね。私自身も頭痛持ちなので気持ちは非常にわかります。

もちろん痛み止めはあるにはあるのですが、お腹の痛みの場合は効きづらいこともあります。

というのもお腹は常に動いており、波のある痛みは腸の動きから来ているときがあります。痛み止めは腸の動き自体を止めるわけではないので、痛みを和らげることはできてもゼロにはできないときがあります。

あくまで、しっかり水分摂取をして体が治るのを待ってあげましょう。

 

 

第2回は“お腹”に関することでした。また、次の更新を考えておきます。

副院長 吉田

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